大工道具

私の父親は若い頃、日曜大工を趣味にしていました。
休日毎に家の中に棚、家具などが増えていくので
「お父さんてスゴイなあ」と大変尊敬していました。

そのうち、見よう見まねで大工道具を
いじるようになっていきました。
父親は「ノミだけは危ないからまだ触るな」
と注意しましたが、それ以外は自由に使わせてくれました。
その結果、金槌、ノコギリなどは小学校低学年から
使いこなしていましたが、カンナはなかなか手強い道具でした。

あれは、小学4年生くらいだったでしょうか…。

何かの拍子でカンナで木を削ってみようと思い立ったのです。
ところが刃の頭を叩いて刃を出したのですが
出過ぎてしまって引っかかり先に進みません…。
(ああ、刃が出過ぎだ…引っ込めなきゃ…)
今思うと小学生の「猿知恵」でした。
ある箇所を叩いて「出した」なら、
反対側を叩けば「引っ込む」はずだと考えてしまい、
何と、「刃の側」を叩いてしまったのです。
今考えると恐ろしい光景です。
当然、刃が欠けてますます削れなくなりました…。
「あれ~おかしいなあ~、どうやって刃を引っ込めるんだ???」

どうしようもなくなり、父親に事情を説明しました。
ところが、父親は怒ることなく、
「あ~やっちゃったか…。ダメダメ、
刃を引っ込める時は台の頭を叩くんだ、ほらこんな風に・・・」
と教えてくれました。

あの時、
「何てことしたんだ!バカ者」
なんて怒鳴られたら、もしかしたら大工道具から
撤退していたかも知れません。
だから今、私自身が日曜大工で棚などを作ることができるのは
父親のお陰だと思っています。
父親にとっても大切な大工道具だったと思いますが、
それを子どもに開放し、
さらにそれを壊しても怒鳴りつけることなく
「指導する」など驚くべき寛容な姿勢でした。

次の日曜日、父親は一日中カンナの刃を研いでいました。
その後ろ姿を見ながら、
申し訳ない気持ちとありがたい気持ちで一杯でした。
ちなみに私は「ガラス切り」も壊しています(笑)

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