1万時間

書店に並ぶ、実に多くの自己啓発書が
「継続」の大切さを唱えています。

社会人になってから、より高度な技術、
より多くの知識、より深い教養を身につけるためには、
継続して学ぶことが大切であるというのです。

よく耳にする「継続は力なり」ということですね。

しかし、多くの本にそのように書いているということは、
逆に言えば、大人でも「継続することが大変難しい」
ということを表しているとも言えるでしょう。

毎日通勤時間30分間で新聞に目を通すことも、
テレビや飲み会の1時間分を読書に回すことも
「良いことだと頭では分かってはいるけれども続けるのは辛い」
というのが社会人の本音では無いでしょうか(笑)

藤原和博氏は著書の中で、
「1万時間以上」かけて練習したことは
「プロレベルに達する」
というマルコム・グラッドウェルの主張を紹介しています。

「コツコツ継続」してそれが「1万時間」に至ると、
「質」が変わるということです。
そして藤原氏はそれに続けて面白いことを指摘しています。

「この1万時間という数字には、
たしかに根拠があるような気がします。
なぜなら、世界各国で義務教育の時間として
割り当てているのが約1万時間だからです。
日本も中学3年生までで約1万時間学んでいます。
つまり、日本人としての基礎を教え込むのに
1万時間を費やしているわけです。」(*)

なるほど、振り返ると我々は、
大人にとっても大変な
「コツコツ継続」する作業を、
「学校に通う」という行為の中でやっていたのです。

勉強が好きな人だけではなかったでしょう。
「みんな行くから」「義務教育だから」
「友達がいるから」「給食があるから」などなど、
理由は様々だったとしても、とにもかくにも、
雨の日も風の日も頑張って学校に通うことを
コツコツ続けたのです。

そう考えると「成果」はさておき、
「学校に通い続ける」という行為そのものが
とても凄いことに思えてきますよね。
きっと、子どもに対する励まし方も変わってくることでしょう。

(*)
藤原和博『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』
東洋経済(2013年)P.130

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