人々:手で星

社会をよくするために学ぶ。

鈴木光司さんの *「勉強する理由」の中で私が最も共感したのは
「社会をよりよくするためだ」というものです。
一人一人がしっかり勉強して
理解力・想像力・表現力の訓練をしておけば、
いざという時により良い判断が下せる可能性が高まります。
それが積もり積もって共同体のメンバーの総合的判断力が高まれば、
共同体全体の幸福度が高まるという趣旨でした。
人間が一人では生きていけない存在であり、
社会的動物であることを前提とすれば、
社会全体がより良くなることにより、
個人も幸せになれるという理屈です。
全く同感です。

特に、メンバー一人一人の判断が全体の在り方を
大きく左右する民主主義の段階にある共同体の場合は
このことが顕著です。

この話は決して「道徳」にとどまるものではないと思います。
マズローの欲求5段階説に基づくと人間の欲求は
「(1)生理的欲求→(2)安全の欲求→(3)社会的欲求
(他者に受け入れられ、どこかに所属しているという感覚を得たい)
→(4)尊厳の欲求(自分が集団から価値ある存在と認められ
尊重されたい)→(5)自己実現の欲求(自分の能力を発揮したい、
達成感を得たい、成長したい)」
と高度化していきます。

私は子どもの頃
「勉強して良い大学に入り良い会社に入り高い収入を得る」
という「学ぶ理由」に懐疑的でした。
「じゃあその先どうなるの?」
という疑問を禁じ得なかったからです。
しかし、その先に
「社会のために貢献し、自分自身でも達成感を感じ取れ、
幸せになれる」というゴールを設定すれば
納得できる話になるのではないでしょうか。
マズローの説とも付合します。

世の中には大富豪になった後で、社会貢献活動をする方がいます。
大富豪の経験は無いので想像するしかありませんが、
やはり、金や物を手に入れるだけでは
人間は満たされないのではないでしょうか。
個人の幸せの観点からも
「社会をより良くするために学ぶ」
というのはうなずける話だと思います。

* 鈴木光司『なぜ勉強するのか?』ソフトバンク新書(2006年)

 

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